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楽劇『白峯』(演奏会形式)

2014年 9月 28日(日)14:00開演(13:30開場)
会場:すみだトリフォニーホール
出演:井﨑正浩, 中鉢聡 他

発売中

曲目

〈東西の融合〉 日本の題材をヨーロッパ音楽で成就させる
楽劇《白峯》は1156年保元の乱に敗れた崇徳上皇の、850年の時を経ても今なお癒えることのない無念を鎮める鎮魂劇(レクイエム)。平安貴族の政権から鎌倉武士の政権に移行する変換期に皇位継承を巡る愛憎と運命に翻弄され、時代の思想・極楽往生を説く西行に対し、渾身の力で拒否する魂の主人公・崇徳上皇に光を当て、華やかな平安時代の陰に潜む陰謀を現代に甦らせます! 《白峯》は作曲家・丹波明が西洋音楽と能楽〈序破急書法〉を融合させた現代オペラとして21世紀の日本に誕生しました。

◆あらすじ                    
第一幕(1場~3場:うらぶれた崇徳院御陵の前)は、平安時代の華やかな文化の陰に潜む陰謀と策略、その歯車に巻き込まれ、四国の直島に流され、孤独、苦悩の四十五歳の生涯を終えた崇徳上皇の恨みは深く、その亡霊は樵に輪廻し、都より供養に来た西行にその恨みを淡々と語る。

第二幕(4場~10場)は、史実を元に自由に再創造した幕で、院政を始めた白河法皇、崇徳の父帝である鳥羽上皇とその第一夫人待賢門院とその入台の儀、待賢門院と白河法皇の情事、鳥羽上皇とその第二夫人美福門院から生まれた近衛帝(揺り籠で表現)、美福門院のその御子に対する愛情が引き起こす日本で最も残酷であった保元の乱、崇徳側の敗北と破滅のエピソードが歌われ、演じられます。

第三幕(11場~12場:再度崇徳院御陵の場)では、再び現れた崇徳の霊は女院、後白河側の対処が如何に非人道的で、天の道に反するかを西行に訴える。そして救いのない大魔縁となって復讐を繰り返す闡提(せんだい)の道を選んだことを伝え、大炎閃光に包まれた崇徳の本当の姿を見せる。ねむりから覚め、全て見たことは恐ろしい悪夢であったことを知り、西行は再度読経に専念し、コーラスも、それに加わりこのレクイエムは終りとなる。


出演;
崇徳上皇/大野徹也 (テノール)西行法師/大塚博章(バリトン)
白河法皇/加賀清孝(バリトン)
鳥羽上皇/中鉢 聡(テノール)
待賢門院/伊藤 晴(ソプラノ)
美福門院/飯田みち代(ソプラノ)
藤原頼長/大久保光哉(ハイバリトン)
藤原忠通/草刈伸明(バリトン)
 
侍従/滝沢博(バリトン)
乳母Ⅰ/杉浦愛美(メゾ・ソプラノ)       
乳母Ⅱ/本田 美香(ソプラノ)
武士Ⅰ/ 迎肇聰(バリトン)
武士Ⅱ/山本康寛(テノール)


原田 節、市橋若菜(オンド・マルトノ)                         
管弦楽:セントラル愛知交響楽団  
 白峯セントラル愛知合唱団
 
<指揮者>井﨑正浩  
<副指揮者>橘 直貴  
<合唱指揮>中村貴志 
<コレペティトゥア>矢田信子
<演出>池山奈都子                                                                 
<監修>木村俊光 

主催: 一般社団法人セントラル愛知交響楽団   
共催: すみだトリフォニーホール
助成: 公益財団法人 花王芸術・科学財団
お申込み・お問い合わせ: コンサートイマジン 03-3235-3777(10:00~18:00 日・祝休)
http://www.concert.co.jp


◆「序破急書法」と「成る」 
ヨーロッパ音楽が発展の一周期を終え、新しい書法を探索している現在、日本の能楽の時間観、構造観、演奏技法などは、時代遅れどころか、次の時代を拓いていくことのできる要素を多く持ち、新しい世界状況に適応したひとつの書法になり得る可能性があると分かってきました。今回《白峯》に採用した「序破急書法」は、日本の14世紀以降、能楽のなかで試みられ、少しずつ完成してひとつの音楽書法として実証されているものなのです。雅楽の決定主義と能の非決定主義とを音楽史のなかですでに経験してきた我々日本人にとっては、21世紀の新しい書法とすることも不可能ではないのです。この「序破急書法」が、日本の、または将来のヨーロッパ音楽の発展の基礎になり得るのではないかという、一握りの希望は持っているのです。
「序破急」原則は日本の古代、中世、近世を通して音楽、演劇、蹴菊、連歌、香道、生け花などの十五にもおよぶ諸芸能の構造、演奏、理論化に大きな役割を果たしてきました。その適応の度合いは、時代、芸能の種類によっても異なりますが、これだけ多くの芸能が、大なり小なりこの原則の影響の下で構成、理論化され、完成されたということは、「序破急」原則が単なる流行、また日本人の伝統への盲目的追従というのではなく、日本人の持つ潜在意識に応え得るものがあったからではないでしょうか。この潜在意識が「成る」という概念です。
「成る」という時間観は、長い冬の間蓄積してきたエネルギーが、春になり花を咲かせ、小さな実を付け、夏の太陽の下に少しずつ大きくなり、秋には成熟する育成の時間で、強度、速度、密度など多くの要因が同時に組み合わされて増加してくる時間で、人間が時を征服するために適応した、抽象的な測定単位ではありません。「成る」時間観は生理学的であり、心理学的な時間観で、自然の植物、たとえばリンゴの花が蕾から少しずつ開いて満開となり、春風にひらひらと散って秋に実を結ぶまでの一連の生命的存在の時間です。
ここで特筆すべきことは、世阿弥がはじめて宇宙の万象、そしてその各現象は、各存在が保有する個々の力の漸進的変化によっており、この変化を「序破急」原則と結び付けたことです。言い換えれば「序破急」という美的原則に、これを支える思想的必然性として、自然観による思考と結び付けたことです。そして一連の漸進的に増加するダイナミックな時間は、世阿弥のいう、行き着いた時にはじめて感じる「成就」の面白さに結び付くわけです。またこの時間は、日本の中世、近世の芸能において、芸術と精神的探求とを統合させる場、空間としての「道」という言葉と結び付いているわけです。この自然に成りゆく力に自己の成りゆく力を託し得た時、日本人はその精神的境地を無、空、悟りといい、またその美的境地を幽玄、わび、さびなどという言葉で表現しているのだと、ある意味ではいえるのではないでしょうか。
(丹波明著『「序破急」という美学』音楽之友社2004年より)

 
2014年9月28日(日)14:00開演(13:30開場) すみだトリフォニーホール
全席指定(税込) S6,500 A5,500 B4,500 学生2,500   発売日:2014年4月12日

プレイガイド: コンサートイマジン03-3235-3777
トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212  
チケットぴあ0570-02-9999【Pコード:229-430】 
e+(イ―プラス)http://eplus.jp   
 
 ◆ 作曲家プロフィール
丹波 明 (作曲家/音楽学)
1932年横浜生まれ。東京藝術大学作曲科卒業後、1960年フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に入学、オリヴィエ・メシアンに師事。
作曲で一等賞、リリー・ブーランジェ賞、ディボンヌ・レ・バン作曲賞等を受賞。
1970年以降、作曲、音楽学の二分野で活躍。多くのCD、多くの著書がある。