コンサートイマジン
蝶々夫人 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 特集

舞台はこう進む

第1幕:蝶々さんの家で、ピンカートンに結婚仲介人のゴローが、日本の風習などを教えている。安田の「翔生」という彫刻が、蝶々さんの家をイメージさせる。蝶が羽を広げたような形は、蝶々さんの象徴。下手(左側)奥にも安田の、世界の全てを象徴するという彫刻の「意心帰」が置かれている。

第1幕:新居をめざして、蝶々さんと友人たちが舞台に登場する。蝶々さんの真っ赤な衣装と、友人たちの白い衣装のコントラストが美しい。

第1幕:蝶々さんの親戚の僧侶ボンゾは、仏教徒がキリスト教徒のアメリカ人と結婚することを激しく諌める。僧侶たちの袈裟をイメージしたような無国籍風の黒い衣装が、蝶々さんの赤、友人たちの白の衣装と対比を形作っている。日没を示す水平線から射す赤い光が闇に溶け、そこに松明の火が、揺らめき幻想的な空間を作る。

第1幕:舞台には、蝶々さんとピンカートンが残り、第1幕のクライマックスとなる「愛の二重唱」が歌われる。舞台全体が青く染まり、2人は「意心帰」の前で愛を誓い、抱き合う。やがて舞台は闇に包まれ、幕となる。

第2幕第1場:第2幕も、安田の「天聖」という彫刻の前で、物語は進行する。演出家のヒューイットはこの彫刻について、「生と死を超えた底知れない次元へと続く不可解な出入り口」という。水平線の彼方には、空が映し出される。蝶々さんは遥か遠くの海上を望遠鏡で覗いてピンカートンの船を探し、帰国を待っている。

第2幕第1場:女中のスズキは、生活費が底をつき、ピンカートンの帰国への疑問を投げかけると、蝶々さんは怒り、ピンカートンの帰りを夢見るオペラ史上に残る名アリア「ある晴れた日に」を歌う。ここで「天聖」は、照明によって闇から浮きあがり、蝶々さんの強い意志の力を表現するような存在感を見せる。

第2幕第1場:蝶々さんの子供が登場するシーン。子供を見たことで、ピンカートンが結婚したということをシャープレスが蝶々さんに伝えることができず、悲劇の扉が開くシーン。この舞台では、ストーリーのターニングポイントと位置づけ、舞台全体に一条の光の道が浮き上がり、そこを子供が蝶々さんの前まで駆けてくる印象的なシーンとなっている。

第2幕第1場:大砲の音が響き、ピンカートンの乗ったアブラハム・リンカーン号の入港を知らせる。念願がかない喜ぶ蝶々さんは、スズキに部屋を庭の桜の花でいっぱいにするように告げ、有名な「花の二重唱」を歌う。天井から桜の花びらが撒かれ、照明を担当する石井が、最も力を入れたというシーンだけあって、そのスケールの大きな優美さに会場からはため息が漏れた。

第2幕第1場:蝶々さんとピンカートンとの子供、スズキの3人は、ピンカートンの帰りを待っている、灯籠のような明かりをかざして白い衣装とベールに包まれた女性達が、名高い「ハミング・コーラス」を歌いながら舞台を横切る。第2場への間奏曲的なシーンだが、青系の舞台照明と松明、白い女性の衣裳とのコントラストが美しい。

第2幕第2場:ピンカートンの愛に絶望し、子供を彼の妻ケイトに託して、自害した蝶々さん。その亡骸に駆け寄り、取り返しのつかないことをしたと嘆くピンカートン。「天」の門を光に姿を変えた蝶々さんの魂が、舞台奥の「天聖」へと静かにのぼっていく様子が視覚化され、やがて歌劇は幕となる。

 

 

話題を呼んだ2001年の公演

湯川れい子

 今までの「マダム・バタフライ」は、出処不明の日本女性が人身御供でアメリカ人に提供され、心身ともに玩具にされて死んでしまった…という、そんな感じのものが多かったように思います。2001年に上演された舞台では、毅然とした武士の娘という姿が初めて浮き彫りにされ、それがなによりも嬉しいことでした。私は一観客として、そして日本人として、とても気持ち良く見ることができる解釈だったと思います。

 そういうことを可能にしたのは、具体的な科白がどうであったかではなく、ヒロインを演じる歌い手の立ち居振る舞いと、舞台全体の雰囲気だったのではないでしょうか。衣装デザインは外国の人が手掛けたものでしたが、そこにも日本人の手が入って、意識的に鮮明な蝶々さんの姿が現れていたように思います。

 とても品の良い、抽象的でものすごくシンプルな装置でしたが、照明があたかも生きているように、時間の変化や心情の変化を表して、本当に素晴らしい舞台になっていました。彫刻が動かないが故に、かえって色々な表情を見せていましたが、それは私にとって初めての経験でした。石井幹子さんはこれまで、建物や都市など、むしろ動かない照明をしていらっしゃいましたが、動く照明をされたのが面白く、興味深いことでした。シンプルな彫刻と変化する照明。その2つがとても生きていたと思います。

 

 

データ
作曲:1902〜3年(作曲者:プッチーニ)
初演:1904年2月17日、ミラノ・スカラ座の初演は大失敗に終わり、同年5月28日、ブレッシャのテアトロ・グランデで改訂版が大成功を収めた。
原作:ジョン・ルーサー・ロングの小説「蝶々夫人」だが、プッチーニはそれを基にしたデーヴィッド・ベラスコの戯曲「蝶々夫人」をロンドンで観劇し、作曲を思い立った。
台本:ルイージ・イリッカ、ジュゼッペ・ジャコーザ
構成:全2幕
言語:イタリア語
演奏時間:第1幕50分、第2幕:80分

ストーリー
時代・場所:明治時代の日本・長崎
主な登場人物:
蝶々さん(ソプラノ)
スズキ(メゾ・ソプラノ)蝶々さんの女中
ピンカートン(テノール)アメリカ合衆国海軍中尉
シャープレス(バリトン)長崎駐在アメリカ領事
ゴロー(テノール)結婚仲介人

 

< 前のページ> 次のページ

ホームページからのチケットお申し込みは7月20日(水)までとさせていただきます。
それ以降のお申し込みは、お電話(イマジン・チケットセンター03-3235-3777)までお願いいたします。
このページのトップに戻る
1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6