イマジン七夕スペシャル・曲目解説①
7/7(日)イマジン七夕スペシャル「ロマンティック4大協奏曲」でサントリーホールに響く名曲の数々、各曲の聴きどころをお伝えしたく、音楽ジャーナリストの池田卓夫さんがご執筆くださったプログラムノートを公開します。
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«イマジン七夕スペシャル2019・曲目解説»
池田卓夫 音楽ジャーナリスト@いけたく本舗
●モーツァルト「オーボエ協奏曲ハ長調K314(285d)」
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜91)は250年も前の作曲家だが、今も「アマデウス」の愛称で親しまれる。特にピーター・シェーファーの戯曲をミロス・フォアマン監督が映画化、アカデミー作品賞を獲得した「アマデウス」(1984)は、様々の苦悩に直面しながら創作に完全燃焼する姿を生々しくとらえ、感動的だった。人柄だけでなく作品が時代を超えて愛される理由の1つは、当時の交通手段を考えれば驚異の広範囲に及ぶ演奏旅行の日々にいくつもの異なる楽器や音楽語法をマスター、ドイツ=オーストリア音楽の堅固な構造とイタリアの歌心の一体化を成し遂げた点にある。
「オーボエ協奏曲」は「フルート協奏曲第2番ニ長調」と旋律ばかりか、ルートヴィヒ・フォン・ケッヘル(K)が作成した目録に基づく作品番号(1862)の314、1964年改定版新目録の番号の285dまでも共有する。当時主流だった教会や王侯貴族の専属作曲家から一歩踏み出し、外部からの依頼に応じた作曲で多忙を極めたモーツァルトはしばしば、ある楽器のために書いた作品を他の楽器へと転用(リサイクル)していた。
この2曲の場合は、まず1777年4月〜9月ころ、ザルツブルクの宮廷オーボエ奏者となったイタリア人ジュゼッペ・フェルレンディスのために「オーボエ協奏曲」を作曲。マンハイムへ演奏旅行に出かけた際は同地の優れたオーボエ奏者フリードリヒ・ラムが独奏し、高い評価を受けた。同年末にはオランダの裕福な商人でフルート愛好家のフェルディナン・ド・ジャンから、「3曲のフルート協奏曲および数曲の室内楽曲」の注文が舞い込む。依頼主はせっかちな性格で、モーツァルトは期日までに1曲の協奏曲しか完成できず、予定の半額に満たない報酬しか手にできなかったことが、自身の手紙にも書かれている。
ド・ジャンはなぜ「値切った」のか? 疑問の解消は1920年まで持ち越された。ザルツブルクでモーツァルテウムの学長や音楽祭総裁を歴任した音楽学者で指揮者のベルンハルト・パウムガルトナーがモーツァルトの息子の遺品の中から、「オーボエ協奏曲」の草稿を発見。「フルート協奏曲第2番」はオーボエ独奏用を1音上げてニ長調とし、フルート独奏パートに多少の手を入れただけの同一楽曲だと判明した。これでは、満額を支払われなくても仕方ないだろう。
「オーボエ協奏曲」は1)アレグロ・アペルトのハ長調、2)アダージョ・ノン・トロッポのへ長調、3)アレグレットのハ長調----の3楽章構成、演奏時間は20分あまり。
▶公演情報
2019年7月7日(日)15:30開演
サントリーホール大ホール
第15回イマジン七夕スペシャル2019
「ロマンティック4大協奏曲」
http://www.concert.co.jp/concert/detail/1926/
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