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イマジン七夕スペシャル・曲目解説③

2019-05-02 21:14:00



7/7(日)イマジン七夕スペシャル「ロマンティック4大協奏曲」でサントリーホールに響く名曲の数々、各曲の聴きどころをお伝えしたく、音楽ジャーナリストの池田卓夫さんがご執筆くださったプログラムノートを公開します。
 
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«イマジン七夕スペシャル2019・曲目解説»
池田卓夫 音楽ジャーナリスト@いけたく本舗
 
●ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」
ホアキン・ロドリーゴ・ビドレ(1901〜99)はスペインの作曲家でバレンシア州ザグンドの生まれ。3歳のとき悪性ジフテリアに罹って視力を失ったが、8歳でピアノとヴァイオリンを始めて音楽の才能を発揮、パリのエコール・ノルマル音楽学校でポール・デュカスに作曲を師事した。1933年に生涯の伴侶となるトルコ人ピアニストのビクトリア・カムヒと結婚、現在ロドリーゴ財団理事長を務める一人娘のセシリアを授かった。1947年以降はマドリード総合大学教授として音楽史を教え、晩年はスペイン王室から貴族に叙せられた。視覚のハンディを見事に克服、20世紀を生き抜いた超人作曲家だ。
 
「アランフェス協奏曲」はパリ滞在中の1939年、ギター独奏と管弦楽のために作曲した。動機はスペイン国内でマヌエル・アサーニャ率いる左派、フランシスコ・フランコ率いる右派が国際社会を巻き込んで激しく戦い、多くの犠牲者を出した内戦(スペイン市民戦争=1936〜39年)だった。内戦で古都アランフェスにある美しい宮殿が被害を受けたことに心を痛め、平和や健康への願いをこめて作曲したとされる。
 
ロドリーゴ自身はギターを弾けなかったため、ブルゴス出身のギター奏者レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサ・イ・ルイス(1896〜1981)の助言を得ながら作曲。1940年11月9日、バルセロナでの世界初演(管弦楽はセサール・メンドーサ・ラサーリエ指揮バルセロナ・フィルハーモニー管弦楽団)の独奏もデ・ラ・マーサが担った。これに気分を害したのが「現代クラシック・ギターの父」と呼ばれる同国人、アンドレス・セゴビア(1893〜1987)。ライバルにロドリーゴが作品を献呈したのを快く思わず、独奏とオーケストラのバランスに異を唱え、デ・ラ・マーサの弟子であるナルシソ・イエペスが「アランフェス」の名演で世界を制覇した後は、完全に黙殺。代わりに委嘱初演したのがロドリーゴのもう1つの名曲、「ある貴紳のための幻想曲」(1954)である。運命のいたずらには後日談もある。1987年6月2日にセゴビアが亡くなったとき、来日中だったヘスス・ロペス・コボス指揮スペイン国立管弦楽団とイエペスが追悼に演奏したのは「貴紳」ではなく、何と、「アランフェス」の有名な第2楽章だった!
 
1)アレグロ・コン・スピリートのニ長調、2)アダージョでロ短調の変奏曲、3)アレグロ・ジェンティーレのニ長調----の3楽章構成で、演奏時間は20分あまり。中でも第2楽章は「恋のアランフェス」などのポピュラー曲、マイルス・ディヴィスの「スケッチ・オブ・スペイン」をはじめとするジャズにも取り込まれ、もはや「世界の誰もが一度は耳にしたメロディー」の域に達している。
 
 
▶公演情報
2019年7月7日(日)15:30開演
サントリーホール大ホール
第15回イマジン七夕スペシャル2019
「ロマンティック4大協奏曲」
 
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